前回、坂口健太郎を描いたときに、今は「モテ要件」が変化してきているので、そういうのをキチンとキャッチするのは商品企画の大事なヒントになると思うって話をしたのですが「そのあたりをもう少し掘り下げて説明せよ」っていうお話をキャッチしたような気がしましたので、それを説明する振りをしてデザインの話を少しだけしますね。
これは僕も以前乗っていたベスパの古いヤツですが、これってなんかこういつ見ても素敵だと思うんです。
乗り物に少し詳しい人ならみんな知ってると思うのですが、二輪は日本、ドイツ、イタリアがブイブイいわせている市場なわけですが、この三つの国は第二次大戦の敗戦国なんですね。
要は戦争に負けて、それまで他から色んな人員とか材料とかリソースをまわしてまで作っていた飛行機とか武器とかを作るのを禁止されて「これからどうしよう?」ってなった時に残っていたわずかな材料とか工作機械で細々と小さなオートバイとかスクーターを作り始めたのがざっくりいうと、この三つの国で二輪が盛んに作られるようになった事情の発端だったりするみたいなんですね。
いわれてみたら、ベスパの小さなタイヤとかモノコックのボディなんかはプロペラ戦闘機のディティールに繋がる感じですもんね。
要は「アリもの」と「できる事」を組み合わせてなんとかカタチにしてたわけですが、世界が戦後の疲弊からなんとか立ち直っていく過程で、すごく喜ばれた商品だったんだろうと思うんですね。
それから徐々に世の中が安定してきて、作り手の「できる事」も増えてきてカタチも洗練されていくわけですが、この際のデザインの進み方が正にその時代ごとの気分にピッタリで、その洗練のさせ方が上手だったからベスパは今もスクーターを作っていられるんだと思うんです。
それともう一ついえるのは、ベスパのデザイン戦略が上手だっただけではなくて、その時代のスクーターのニーズそのものが今に通じる価値のあるものだったから「スクーター」っていう商品がなくなっていないんだと思うんですね。
よく、「ニーズに合わせて作れ!」っていう話を聞きますが、だからといってそれが将来的に長期にわたって「残るモノ」になるかどうかは分らないということでもあると思うんです。
「今、売れるモノを作る」というのは商品企画の基本ですが、「残るモノを作りてぇー!」っていうのはデザイナーの野望でもあると思います。
これってもちろん、まず「今売れる」をクリアしないといけない話なわけですが、抽出したニーズ自体にどれくらい普遍的な価値があるのか、あるいは今はまだニーズとして捕まえられていない要件をどう見つけていくのかみたいな所が大事になってくるわけですよね。
そういうのを考える時に、原始的でシンプルな「モテる」みたいな要素で考えてみると意外と最短距離であれこれ見つかるかも知れないんじゃないかと思うんです。
あれ?ところで質問はなんでしたっけ?