NHKの夜ドラ「ミッドナイトタクシー」がとても気に入っていて毎回しっかりと観ているわけなんですが、一話が15分っていうのが発明だと思うんですね。テレビとの付き合い方として現代的っていうのかな。例えば一時間テレビのドラマを観るのってそれなりに準備とか負担が必要になると思うのだけど15分なら気軽度がグッと高まるし習慣化もしやすいし。更にこのドラマでいえば時間が短い事で物足りなかったり、逆に詰め込み過ぎみたいなトコがなくて、むしろゆったりとしたリズムでキチンと入り込めるのが脚本とか演出のチカラなんじゃないかと思うんですね。
で、主演のこの人がまた、そういうリズムや風合いにピッタリとハマっているっつうか的確に機能していて、しっかりとストーリーに乗せて行ってくれているのがすごいなあと思っています。思えば、これまでもいくつかこの人の出演作を観てきたと思うのだけどメインのキャストではなかったとしても、なんていうんだろ目で追っちゃうというか存在感の高い女優さんで「余韻のある人」だなあと思っていたわけなんですが、今回のこの役はまさにそういう気配が存分に発揮されている感じがします。セリフも表情も少ない役柄なのに、その時々の心象や伏線をしっかりと質量を持って映像の中に出現させられるのは相当な資質だとあらためて思いましたよ。
あ、あと立ち姿とかも背筋がシャンと伸びてカッコいいし、きっと制作側にも、この人のファンは多い気がするなあ。なんかこう「いい作品の目印」になっている気がするし。
野呂佳代のビジュアル的な解釈【巻き込まれ力の人】
小声でこっそり書きますけど、僕は政治とか都知事選といった題材に関心の薄いタイプなわけですが今期のドラマでは「銀河の一票」がズバ抜けていると思います。いや、そこは大きな声でいってもいいか。
主役の黒木華さんをはじめとした出演陣がみんな素晴らしいし脚本や演出も緻密でテンポが良くて「良いものを観ている感」をグイグイ感じるというかテレビドラマのあるべき姿を体現しているような気すらするわけなんですね。
中でも準主役(になるのかな?)で都知事候補になる月岡あかり役のこの人がとても好演していて新鮮な驚きと同時に、きっとこの役は他の人では成立しなかったんじゃないかとも思っています。
一方、僕がこの人の存在をキチンと認識したのは「ゴッドタン」でハリウッドザコシショウのネタとかを完コピしていた時だったと思うわけですが、ガシッとやりきっている感じが圧倒的におもしろくて、その時もめちゃくちゃ驚いたというかバラエティ番組のムチャ振りに巻き込まれてもキッチリやり遂げる「気概」みたいなものを感じたわけなんですね。
今回のドラマでも相当ぶっ飛んだ設定なのに、そこに引っかかりを感じさせずに物語りの流れを進めて行ける感じとかに、そういう巻き込まれ力とか対処するチカラみたいなものを感じるんですが、そういうキャラクターとか性能って練習して身につけるのとはちょっと違う領域のモノのような気もするっていうのかな。主要な出演者なのに観てる側に一番近い気配を自然に出せる希有な存在感だと思います。
おそらく女優さんとしての立ち位置もこれからどんどん確立していくと思いますが、バラエティ番組の軸足も残しておいてくれて時々でいいので芸人さんのネタの完コピも展開してくれたら、少なくとも僕は嬉しいような気もしています。
三浦璃来&木原龍一のビジュアル的な解釈【思いやりと敬意の美しさ】
フィギュアスケートについては全然詳しくなくて、こっそり告白すると、これまでもそんなに熱心に注目してきたタイプではなかったのだけど今回のオリンピックでは団体戦の最初から観ました。いや、正直にいうと「よーし!観るぞ!」と構えて待っていたわけではなくてホントに「たまたま」タイミングが合っただけなんですけど。
ただ、観始めると各国の選手の全演技が素晴らしくてグイグイ引き込まれたというか、僕がなんとなくイメージしていたフィギュアスケートから競技自体が随分進化しているような気がしました。なんかこうミュージカルとかディズニー映画のシーンを観ている感じの「素敵感」が増量されたみたいで。
で、登場人物みんながホントに素晴らしかったけれど、やっぱりこのペアの引き込むチカラはとても凄くて更にドラマチックだったと思うんですね。号泣する程の失意のあとに、号泣する程の歓喜があって、更にその場面全部に感情移入しちゃうっていうのかな。なんかこう演技自体は観衆やジャッジに向けたものが基本になる一方で、そのあとの感情の揺らぎをお互いだけで受け止め合うっていうのかな。本質的な「ペア」という意味を体現していたというか競技者として観ている人達にベクトルを向ける瞬間と相手を慈しむ時間が完全に分離して、そこが、より人間らしくて美しかった気がするわけなんです。
あ、それと今回この人たちの演技を観ていて気がついたのはペアのフィギュアスケートってコンタクトスポーツなんですね。格闘技やある種の球技もコンタクトスポーツって呼ばれるけれど、それはコンタクトすることで相手を攻撃したり邪魔をしたりするのが基本になる一方で、この競技はコンタクトする事で相手を際立たせたり美しく見せたり二人で同調したりするのがテーマで、そこにはやっぱりお互いへの思いやりや敬意が条件になる点がこの競技の美しさの源泉であり、人の暮らしのありたき姿像でもあって、そういうのにみんな魅せられるんじゃないかと思いました。そういえば、表彰式やエキシビションで登場したフィギュアスケート選手達もみんな他者に対する思いやりや敬意にあふれていた感じでそういう世界感がフィギュアスケーターからのメッセージでもある気がします。
いや、僕もそういう感じの人になりたいとトリプルルッツとトリプルトゥループ の違いがもひとつわかっていないクセに、あらためて思いましたよ。

髙石あかりのビジュアル的な解釈【コミカルとシリアスの領域がめちゃ広い】
NHKの朝ドラ「ばけばけ」がとても良くて僕が観るようになって以来ベストの朝ドラだと思っています。15分がとても短く感じるし。
脚本とか演出とかキャストが素晴らしいと思うし、あとカメラワークがおしゃれだと思うわけですが、特に主演のこの人がすこぶるすごいなあと驚愕しています。
いや、実はこのドラマまで僕の観測範囲に入っていなかった人なので全く初見の女優さんだったのだけど調べたら既にたくさん出演作があって、慌ててまずは「ベイビーわるきゅーれ」をテレビドラマ版と映画版を全部観ました。やっぱりすこぶるすごいなあと驚愕しましたよ。
なんていうかこう「コミカル」と「シリアス」の受け持ち領域が標準的な若い女優さんよりはるかに広いっていうか、杉並区とサウスダコタ州くらい面積差があるっていうのかな。要は「かわいく撮ってもらおう」とか「美人ぶりを納めてもらおう」みたいなトコより物語りの登場人物としてストーリーに引き込んでいくみたいな機能を徹底的に重視している感じがするわけなんです。美人なのに。
こういう人が登場すると女優さんの性能評価みたいなトコの基準が大きく変動するっていうか、軸足の置き方とか覚悟みたいな部分で真価を問われる感じがするっていうか「看板」としてだけじゃなく「中身」の機能とか味付けにも重要な要素になるのって、そりゃやっぱり大事だよなあと思い知らされるようでハッとさせられるんですね。
多分、主役級のキャストってエンジンみたいなもので、その性能が物語りのスピードとか滑らかさの原泉なんだなあと改めて思うわけなんです。
そういう意味で排気量のデカい、すこぶるすごい女優さんだなあと思うわけなんです。

